第1回建替事例見学調査報告 建替えた団地「アトラス調布」
建替え準備のための調査委員会
組合員の建替え負担金ゼロで建替えた他の団地の見学・調査で、委員会の委員、理事、組合員が、アトラス調布(旧調布富士見町住宅)を9月9日に訪問してきました。
アトラス調布は調布市にあり、京王線の北側に位置し、「調布」駅からバス3分又は徒歩15分です。調布駅周辺は再開発されてきれいになっており、ここを抜けた住宅の多い街並みの中に、アトラス調布があります。
第1印象は「オシャレできれい」、「樹木も美しい」。建物と道路は、ベージュと茶系の色彩で統一されています。建物は東西に長い2棟で、8階建て、一部6階建てです。
建物の間に調布市道が1本あります。夜間は照明で、建物等が美しく見えるそうです。
建替えに関わった管理組合の現副理事長(女性の方)と、建替えに関わった業者、現管理業者の方が出迎えてくれました。まずは、マンション1 階の会議室でアトラス調布の概要をお聞きしました。会議室はガラス張りで、写真のようにきれいです。
副理事長の方から、親切、丁寧に多岐にわたり、対応していただきました。
概要を聞いてから、建物などを見学しました。
建物と、道路、緑が調和しています。電柱はありません。
玄関です。
玄関ロビーの向こう側は緑の庭です。
1 階に、集会室兼用の子供部屋があります。
(写真なし。)
郵便箱と宅配ボックスです。
玄関のゲスト・ルームです。
屋上からの眺めです。
屋上庭園です。
棟の廊下です。
住宅の廊下側の窓です。各住宅のエアコンは、
廊下側窓下に置いてあります。
棟の中庭です。すべて、デザインが違います。
緑の豊かな庭があります。
駐車場と駐輪場は地下です。
一方通行で、通路幅が広いです。
駐車場は機械式駐車場です。
駐輪場です。自転車はエレベーターを使えます。
来客用の駐車場です。
オートバイ置場です。
ペット用の水洗場です。
棟と棟の間の道路です。この道路は旧住宅とその北側に所有していた駐車場の間にあった調布市道を付け替えたもので、車両が速度を落とすように、少しカーブしており、道路端に植え込みがあります。車と歩行者両方が使える道路です。バリアフリーで道路と歩道の段差が少なくなっています。
隣接して調布市の公園があります。(写真なし。)
調査項目とその報告
①建替えを必要とした理由は。
⇒ 住居内に洗濯機置場がない、住居内に段差がある、エレベーターがない、耐震性が不安、水漏れ多発など建物の老朽化、高齢化で外出に苦労。
②組合員のうち、どの年齢層の方から建替え要望があったのか。
⇒ ほぼ、全年齢層から建替え要望があった。
③再生には、建替えと修理・改造の両手法があるが、建替えを選んだ理由は。
⇒ 建替えしないと①の問題が解決せず、修理・改造では建物を維持するのにお金がかかるから。
④建替え時の組合員の負担金は。
⇒ 旧住宅と同等の床面積に入居する場合は負担金ゼロ。狭い住居に入居する場合はお金を返し、広い住居に入居する場合は追加のお金を支払ってもらった。
⑤建替え時に公的助成金はあったのか。
⇒ 助成金はゼロで行った。
⑥引っ越し費用と仮住まいの費用は補助したのか。仮住まいの住居の確保は。
⇒ 補助はなく個人負担。民間賃貸住宅を事業協力者(ディベロッパー)が借り、そこを借りる方法もとった。これを待たず、建替えが決まると引っ越し先を自分で決め、退去する人も多かった。
⇒ 建替え時には管理組合は消滅するので、管理費と修繕積立金の残金は組合員に返却した。
⑦建替え後の自宅の選定方法、及び旧自宅と新自宅の広さの関係等は。
⇒ 旧建物の立地、棟等の区別なく、建替え後のすべての住宅を対象に入居希望を出してもらい、希望が重複する住宅については抽選にした。抽選になることは少なかった。
⇒ 建替えにより組合員が無償で取得できる新自宅の面積は、旧自宅に較べて95%~130%になった
⇒ 旧組合員への配分が終り、残った住居を一般に販売した。
⑧建替えはどのような組織で、何人がどのように活動したのか。
⇒ 委員会を設け14人で活動。委員の任期は建替え終了迄で、委員は女性の方が多い。
⇒ 団地内に「談話室」を設け、建替えの話はせず、自由に話せる場を作った。その場で疑問点が出れば調べるという対応をとった。
⇒ 広報は階段掲示、広報紙の配布などで行った。戸別訪問は行っていない。
⑨種々の建替え手法のうち、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」を使って、建替組合(法人)を作って建替えた理由は。
⇒事業協力者からの事業説明などによる。
⑩行政当局に対する要望、折衝等は誰が行ったのか。
⇒ 主に事業協力者が行った。
⑪事業協力者(ディベロッパー)の選定方法は。
⇒ 4社から応募があり、希望する事業者はどこかについて組合員からアンケートをとって決めた。
⑫建替え後に再入居した戸数の割合は。
⇒ 建替え前には、全176戸のうち120戸に住んでおり、建替え後には104戸が再入居した。
⑬作って良かった施設、作らなかったが作った方が良かった施設は何か。
⇒ 玄関のゲスト・ルームは不要だった。集会室がなく子供部屋と兼用なので、集会室が必要であるが、広い集会室はいらない。
⇒ 地下駐車場は人気がある。
⑭建替え後の新管理組合の管理費、修繕積立金の金額はどうように決めたか。
⇒ 他の管理組合のものを参考にして決めた。
⑮建替えで苦労したことは何か。
⇒ 組合員の、建替えの合意形成に苦労した。
⇒ 情報を早く知らせることが必要で、 建替えで動いてくれる人に役員・委員になってもらうことが必要。
新旧比較
旧調布富士見町住宅 | アトラス調布 | |
敷地面積 | 約12,507㎡ | 12,446.42㎡ |
建築時期 | 昭和46年 | 平成27年 |
延べ床面積 | 約10,470㎡ | 約35,060㎡ |
棟数・階数 | 5棟、地上5階建て | 2棟;地上8階建て・地下1階。 一部は地上6階建て・地下1階 |
総戸数 | 176戸 | 331戸 |
住宅の間取り | 3DK+納戸 | 2LDK~3LDK。90種類。 |
住宅面積 | 全戸50.83㎡ | 56.14㎡ ~ 94.64㎡ |
建替えの経緯
昭和46年 | ・東京都住宅供給公社が分譲 |
・・・ この間で 建替えを検討したが、建物の規制緩和ができず、中止。・・・・ | |
平成20年 | ・組合員へのアンケート実施。建替え検討委員会等の各種委員会を設置。 ・事業協力者選定のコンペを実施し、旭化成を選定。 ・建物の規制緩和(建物の容積率を80%から200%に緩和)と調布市道の付け替えのため、行政当局に要望・協議開始。 ・団地内に「談話室」を設け、建替え活動実施。 |
平成23年 | ・規制緩和実現(地区整備計画制定)。 |
12月 | ・総会で、区分所有法による「団地の一括建替え決議」成立 |
平成24年5月 | ・「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」による「建替組合」(法人)設置・認可、権利変換方式での建替え。 ・旭化成が参加組合員になる。(参加組合員とは、前記の法律により、建替える住宅を所有する組合員以外の者で、建替え費用を出資し、建替え後、建物の一部を取得する者のことです。) |
8月 | ・調布市道の付け替え工事開始。 |
平成25年 |
・調布市道の付け替え工事完成。 ・権利変換計画認可。解体工事着工。 ・建物の工事着工。 |
平成27年5月 | ・建物竣工・引き渡し。 |