第2回建替事例見学調査報告 建替えた団地「桜上水ガーデンズ」
建替え準備のための調査委員会
組合員の建替え負担金ゼロで建替えた他の団地の見学・調査で、委員会の委員、理事、組合員が、桜上水ガーデンズ(旧桜上水団地)を9月30日に訪問しました。
桜上水ガーデンズは京王線「桜上水」駅の南、徒歩3分にあります。「桜上水」駅で下車し、踏切の個所で狭い道に入ります。道が狭く、踏切は渡らないのですが踏切があるため、歩行者と車で混雑しており、アクセスはよくありません。この道を抜けると、桜上水ガーデンズがあります。
第1印象は「きれい」、「圧倒的な広さ」。建物は、アトラス調布と同じように、ベージュ系の色彩で統一されています。広場や道はモザイクです。建物は8棟で、6階~14階建てです。建替えの自己負担金ゼロで、引っ越し・仮住まい費用として各住宅あたり500万円支給しています。
(最初に通された建物のロビー)
建替えに関わった当時の建替組合の理事長と、建替えに関わった業者等の方が出迎えてくれました。この、当時の理事長の方から、親切、丁寧に対応していただきました。
まず、会議室に通されました。この建物の入口はホテルのロビーのようで広く、きれいです。荷物を置いて、建物などを見学しました。
(広い広場)
(この木は旧団地のときの木で、多くの木を元の場所で保存しています。)
(棟は免震構造です。)
(棟の入口です。)
(棟の中庭です。)
(駐車場は地下です。)
(駐輪場は屋内です。)
(キッズ・コーナーです。)
(図書室です。)
(パーティー・ルームです。)
(住宅内は見学できなかったので、 モデル・ルームの写真を載せます。)
新旧比較
旧桜上水団地 | 桜上水ガーデンズ | |
敷地面積 | 約47,900㎡ | 約46,595㎡ |
建築時期 | 昭和40年 | 平成27年 |
延べ床面積 | 約30,500㎡ | 約98,550㎡ |
棟数・階数 | 17棟、地上4階建て、 地上5階建て | 8棟;地上6階~14階建て、 地下1階 |
総戸数 | 404戸 | 878戸 |
住宅の間取り | 2LDK、3LDK | 2LDK~4LDK |
住宅面積 | 58.73㎡、69.77㎡ | 58.48㎡ ~115.47㎡ |
建替え経緯
平成元年 | 「桜上水の将来を考える会」発足 |
平成11年6月 | コンサルタント選定(日建設計) |
平成14年5月 | 事業協力企業選定(野村不動産、三井不動産、大林組、清水建設) |
平成15年7月 | 総会で、「建替え推進決議」可決 |
平成17年11月 | 法律による「都市計画」決定、「一団地の住宅施設」廃止 |
平成18年4月~ 平成21年4月 | 3回の総会で、「団地一括建替え決議」否決 |
平成21年9月 | 総会で、「団地一括建替え決議」可決 |
平成22年7月 | 法律による「建替組合」認可 |
平成25年6月 | 解体工事着工 |
平成25年9月 | 本体工事着工 |
平成27年8月 | 竣工 |
調査事項とその結果
①建替えを必要とした理由は。
⇒ エレベーターがない、建物がバリア・フリーでない、耐震性が不安、建物の老朽化、水漏れ・ガス漏れ多発、高齢化で外出に苦労、天井が低い、遮音性・断熱性が悪い。自宅の電気容量が少ない。
②組合員のうち、どの年齢層の方から建替え要望があったのか。
⇒全年齢層から希望があった。
③再生には、建替えと修理・改造の両手法があるが、建替えを選んだ理由は。
⇒ 修理・改造では費用はすべて自己負担になるので嫌であった。一方、建替えは外部から資金導入ができるので、建替えを選択した。年金生活者が多く、現在の収入で生活設計ができており、追加の資金は出せないので、建替えに際し、負担金が出せない人の立場に立って建替えを進めた。
④建替え時の組合員の負担金の有無は。旧住宅と新住宅の広さの関係は。
⇒ 負担金ゼロである。旧住宅(58.73㎡及び69.77㎡)と新住宅を等価交換して、平均で約70㎡の新住宅に入居できた。狭い住宅に入居した人にはお金を払い、広い住宅に入居した人には、追加のお金を支払ってもらった。
⑤建替え時に公的助成金はあったか。
⇒ 東京都のモデル事業になったので、少し助成金をもらった。
⑥引越し費用と仮住まいの費用は補助したのか。仮住まいの住居の確保は。
⇒ 各住宅当たり、500万円補助した。仮住まいは賃貸住宅等に住んだ。
⑦建替え後の自宅の選定方法は。
⇒ 組合員の土地の持分は全住宅で同一なので問題はなかった。旧住宅の価値は、第三者に鑑定してもらって、駅への遠近、棟の場所、住宅の階、窓の向き等によって定め、これによって新住宅の希望をとって、その後、棟の広さ等を決めて設計し、各人の新住宅を公開選定した。
⑧建替えはどのような組織で、何人がどのように活動したのか。戸別訪問はしたのか。
⇒ 20人~25人で建替え委員会を作って活動した。建替えは法律に基づく建替組合を作って行った。建替えの途中で、ボタンの掛け違いがあったので建替えに時間がかかった。戸別訪問は当初は行ったが、相手に嫌われたので止めた。話し合いは管理事務所で行った。
⑨種々の建替え手法のうち、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」を使って、建替組合(法人)を作って建替えた理由は。
⇒ 同法に基づかない他の方法による建替えは、自己の財産を失うリスクが大きいのでとらず、同法による建替組合(法人)を作ると自己の財産を常に確保できるので、この方法により建替えた。
⑩行政当局に対する要望、折衝等は誰が行ったのか。
⇒ 住民が実施。業者では行政当局は対応してくれない。
⑪事業協力者(参加組合員;建替資金を出す者)の選定方法は。
⇒ まず、コンサルタントを選んだ。次に、ディベロッパー(参加組合員) として4社が応募して来たので、事業量やバランスを考えて2社にした。
その後、ゼネコンを紹介され、選定した。
⑫建替え後に再入居した戸数は何戸か。
⇒ 旧住宅数404戸のうち、350戸。
⑬作って良かった施設、作らなかったが作った方が良かった施設は何か。
⇒人気があるのは、来客が宿泊するゲスト・ルーム(ホテル様の宿泊部屋)、図書室、会議室である。保育施設は行政側から設置要請があったが、作らなかった。
⑭建替え後の新管理組合の管理費・修繕積立金の金額はどうように決めたか。
⇒ 旧管理費・修繕積立金の額と同等にした。駐車場代は月¥15,000。
⑮建替えで大事なことは何か。
⇒ 建替えに賛同する仲間の結束が大事。業者任せはダメで、組合員に不信を持たれる。会計は正確・明確にしておくことが必要。